最近は野菜の事典のような本が人気のようで、大きな本屋に行くと何種類も並んでいることがあります。仕事柄、そんな本には必ず手が伸びて中身をチェックすることになるのですが、どの本にもよい野菜の選び方という項目があって、八百屋のおじさんは読みながら頭を抱えてしまいます。
確かにどんな野菜にも選ぶポイントのようなものがあるのは確かです。でも、畑で育つ野菜はそんなに規格通りに育つわけがない。有機農業ではさらに虫の攻撃やら病気の害を乗り越えて育つわけですから、見目美しい野菜など最初から作ろうと考えてもいません。
たとえば、キュウリは育つ途中に様々な条件で曲がることがあります。一般栽培の生産者は市場に出荷するとキュウリの曲がり加減で値段が変わるので、キュウリに透明なチューブを 【中面に続く】 かぶせて真っすぐに仕立てる極端な人もいるらしい。即効性のある化学肥料を使うとキュウリの樹勢が整えられて曲がりが少なくなるとも言います。では、真っ直ぐなきゅうりと曲がったキュウリでは味が違うかというと、そんなことは全くありません。問題があるとすれば、スーパーでトレイに入れて販売する際にトレイからはみ出してみっともない、というくらいのものです。
私たち人間の大きさや見かけが不ぞろいであるように、野菜を見かけや大きさで選ぶのは愚の骨頂です。理由も必要もない基準で野菜を選んでいると、野菜はどんどんまずくなっていきます。