CAMBIOという屋号は、スペイン語で変える、交換するなどの意味になる単語を拝借したものです。スペイン語圏に行くと、街のあちこちにCAMBIOという看板がかかっていて、みんな両替屋さんです。だからスペイン人のお客さんから見るとなぜこんなところに両替屋があるのかと思われるようで、実際にカノラホールに来たというスペイン人の演奏家から「なぜこんな名前にしたのか」と尋ねられたこともあります。
CAMBIOという名前に行きつくまでには紆余曲折があって、さまざまな候補が浮かんでは消えた末に決まった屋号です。一貫していたイメージは、野菜を村から街に運んでお金に換えて村に戻すこと、つまり交易をする場所ということでした。
かつて旅をしたアラスカには、トレーディングポストという食べ物から雑貨まで何でも売っている、いわばよろず屋のような店が原野の中の集落にあって、その昔は原住民イヌイットの産品と生活物資を交易する場所だったようです。CAMBIOには物々交換という語彙もあることから、ほとんどこじつけのようですが、村と街との交易所という意味で屋号に使わせてもらいました。
先週、フェアトレードをめぐっての言いがかりには、このCAMBIOという屋号をつけた背景や目指す方向性に、微妙にかかわりがあるのです。街に住んで村の産品を金銭に換えるという生業をしていると、国内の現実を前にして発展途上国とフェアなトレードと言ってみても、結局は対岸のリゾートホテルから花火を見ているような虚しさをいつも感じてしまうのです。