新聞に折り込まれてくるスーパーのチラシの商品の配列には一つの法則があって、左上段からZ字型に重要な商品を並べるようになっています。つまり左上が一番のメインで、上段の真ん中、右側と続き、左下に折れて中段の真ん中が4番目、下段の左が5番目、下段の右が最後になります。これはチラシを読む人の目線を考えているそうで、なかなか理にかなったものなのだそうです。
暮れのある日、スーパーの折り込みチラシを見ていると、ある「異変」に気がつきました。かつては暮れの27日を過ぎると、どこのスーパーのチラシもおせち用品が最上段の左側を飾っていたものなのですが、今年の左上段は刺身とオードブルの盛り合わせ、右上段は焼き肉用牛肉、おせちはどこへ行ったのかと見回してみると、なんと下段右側一帯におせちも一応ありますよ、という程度の扱いなのでした。
もうおせちなんて…という傾向があるのはずいぶん前から感じてはいましたが、スーパーが競うように元旦から営業するようになったこの数年で、その傾向は更に強くなったように思います。
スーパーが元旦から営業しているということは、食材がいつもどおりに手に入るわけですから、なにも買い置き、作り置きなどする必要がなくなりました。正月だからといって台所仕事を休む大義名分もなくなり、口慣れないおせちを食べる人が少なくなるのは当然の状況になってしまったのです。
人間の生活とはその時代の状況によって変化していくものですから、正月の食べ物が変わっていくのも当然の流れなのかもしれません。でも、食べ物を生み出す自然のシステムは、人間の生活がどう変わろうと変わりようがありません。それをわきまえずに人間の生活が勝手にどんどん変わっていってしまうので、人間の生活と自然のシステムとの間に軋轢が生じているのが、今の地球上の最大の問題なのです。
さまざまな自然環境と食べ物の問題を思えば、もう自分のことだけを考えていれば生きていける時代ではなくなりつつあります。炭素がどれだけ減らせるか、などという生活の上で実感のない基準をもとにした「貢献策」ではなく、食べ物はすべて自然のシステムが作り出すものだけに、食べ物を通じてもっと身近にや自然環境の問題をとらえてみてはいかがでしょうか。オーガニックという食べ物の生産方法は、その問題の解決にもっとも実際的に貢献する方法であると私たちは自負しています。
おせちに限らず、この国の食べ物に関する慣習なり伝統なりは、その変わり目にあたってなんら検証もなく、いつも、ただ流されるままに変わってきたような気がします。便利で安いことが食べ物を選ぶ最大の要素となりつつある中で、このCAMBIOという店は今後も全くその逆を提案していきます。今年も私たちはそれを誇りとして一年を始めたいと思います。