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リスを追いかけたまま山に入り込んだ犬は、一体どこまで行ってしまったのだろうか。切り株に腰をかけ、さまざまな鳥のさえずりに耳を傾けながら、犬を待つ。
この犬をもらったのはわずか4ヶ月前のことだ。迷い犬だったのを、もらってくれと頼まれて飯田まで引き取りに行った。だから年齢も生い立ちも知らないが、すぐに以前から飼っていたかのように家族になった。保護していた家ではすでに2匹を抱えていて、困った末に何度も遠くまで捨てに行ったが、必ず翌日には帰ってきてしまったのだと言う。迷い犬になった理由はわからないが、なかなか賢い犬だ。 もらってきて以来、毎週日曜日の朝は山へ行き、自由に走らせてやることにした。引き綱を解いて自由になった犬は、最初の頃は勝手に家に帰ってしまったり、隣家の犬のご飯を失敬してしまったことがあった。何時間も行方がわからなくなり、忘れた頃にひょっこりと家に帰ってきたこともあった。それでも懲りずに、毎週自由な時間を作ってやると、犬は失敗を繰り返しながらも、回を重ねるごとに少しずつ学習していった。やがて、毎回きちんと付いて来られるようになった。 雪が消え、緑が濃くなると、日曜日の朝は犬を自由にするための時間ではなく、里山を歩くことを楽しむ時間に変わっていった。犬は里山を一緒に歩く伴侶になった。引き綱を解くときの一抹の不安はなくなり、犬との間に信頼関係のようなものができたことを感じた。待っていればきっと戻ってくる、と思えるようになった。 つがいのカケスがやってきて、けたたましい声を上げる。吹く風が冷たくなったように感じた。犬を待っている間に、すっかりと体が冷えてしまったようだ。犬は置き去りにしても自分で家には帰れるのだから、先に下りることにする。広葉樹林の明るい林道から、薄暗い北斜面の山道に入る。同じような植生でありながら、日向の南斜面と日陰の北斜面ではずいぶんと気分も違ってくる。陰の部分は本能的に早く抜けてしまいたいと思うのだろうか、無意識のうちに足が速くなる。 暗い山道を早足で下る。枝打ちで落とされたヒノキの枝が、動物のあばら骨のように見える。以前ハンターが捨てていったシカの骨がこの山に散乱していたことがあって、そのときの記憶が枝をあばら骨に錯覚させるのだろう。何週間か前はいつもとは違う道を通り、獣道を登って家の近くに出ようとしたところで、道を見失ってしまった。やぶを漕いでいるうちに下り坂で足を滑らせて、しりもちをついた。何かにつかまって立ち上がろうと手を伸ばしたところに、動物の骨のようなものが転がっていた。骨にしてはおかしな形だと思い拾い上げてみると、それは長さ50cmを優に超える四つ又になったシカの角だった。 山道は尾根の斜面を下りきり、沢の奥に下りる。風の強い日でもここだけは風が吹かず、いつもしんと静まり返っている。大きな木に囲まれた沢の奥は、山の精気が溜まっているように感じる。少しだけ平らになった地面には無数の動物の足跡。ところどころほじくり返したのは、ミミズを探しに来たイノシシだ。ここは夜になると、この山に住む動物たちが集まって、会議を開く場所なのかもしれない。枝打ちされた枝が、今度はシカの角に見えてきた。もう一本あんな立派な角が見つかったら、どんなに嬉しいことだろう。どこかに隠れた動物が、息を潜めてこちらを見ているような気がする。二又になっているのはやっぱり角ではないか、と道を外れて拾おうとした瞬間、背中の間近で動物の息の音がした。山の精気と動物の目が、シカの角を探す欲望を戒めに追いかけて来たか。一瞬の鳥肌とともに振り返ると、耳まで裂けた口から赤い舌を出した茶色い犬が、ばね仕掛けのように尻尾を左右に振っていた。 追いついてきた犬とともに、沢伝いに下る。もうすぐ家が見えてくるはずだ。行きよりも日が高くなり、道が明るくなった。その分、鳥の声は少なくなってさびしくなった。 今日は週に一日だけの、大事な宝物のような日曜日だ。暗い杉林から明るい草原に道が続く。先を歩く犬がシルエットになって、ある一枚の有名な写真を思い起こさせた。今日は松本で写真展が開かれている。朝寝をしている子ども達を、たたき起こして出かけよう。その写真は、明るい「楽園」に向かって幼い兄妹が歩いていくもので、写っているのは犬ではなかったが。 2003/5/27
by organic-cambio
| 2009-12-11 18:08
| 店主の雑言
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