やってしまった。いつかはこうなるのではないかとは思っていたのだが、ついにやってしまった。
事件の裁判ではよく、動機に計画性があったかどうかで犯意の深さを推量するらしい。しかし、思いつめて犯行に及ぶ場合は、大体が計画性というには及ばないものの、少なからずいつかはこうなるのではないかという気持ちが積もり積もっているはずだ。今になってはそう思ってしまう。
朝、目が覚めたときに、すぐにやってしまおうと思った。いつものように起きだし、いつものようにしたくを整えると、凶器を手にして迷うことなく一気に事に及んだ。ぐにゃりとした物体を思い切り凶器で切ると、それは音を立てて床に転げ落ちた。さらにもう一度凶器を振るってとどめを刺し終わると、血だらけ・・・ではなかった錆だらけの凶器を戸棚にしまい、私は何ごともなかったように、温めておいたカップに紅茶を注いだ。
こうして我が家のパソコンは、ネットもメールもつかえないただのパソコンになった。子供たちが夢中になった仮想世界や対戦相手とつながるケーブルは、無残にもペンチでちぎられ、あえなく床でとぐろを巻いた。
我が家ではオヤジがキレると、ケーブルも切れてしまうのである。 2006/3/7