テレビという、落ちぶれたとはいえいまだにもっとも影響力を持つといわれるメディアに背を向けて生きているので、世の中の皆さまがどんなことを考えて買い物をなさっているか、実はあまり詳しくは存じ上げておりません。だから、この店はテレビのCMで見たことのない商品ばかりが並んでいるから、不安でとても買えない、という方が時々いらっしゃると聞いて、驚く一方で妙に納得もするのであります。
なぜなら、この国の市場やテレビは消費者に媚びることを身上としていて、消費者はわずかでも自分の得になる(という錯覚)を追いかけています。メーカーはいかに安く物を作るかに明け暮れ、テレビは少しでも多くCMを観てもらうために受ける番組ばかりを作り、視聴者=消費者はテレビに流れる商品がこの店ではいくらかという買い物に終始している。だからそんな小さな欲望を満たすことを追っている人から見れば、この店で売っているものなど、高いし、ダサイし、知らないし、の3拍子揃った「選択外」のものばかりなのだろうと、想像に難くはありません。
テレビというメディアは、物事を受け手に簡単にわかるように伝えてきます。受け手がそれはどんな意味なのだろう・・・などと深く考えるようであってはならない。答えを用意しておいて、誰もが同じ答えに行きつくように制作してある。文字から文章を解読して物事を想像して理解する本とは違って、考えないで物事を理解させてしまう。その「効果」が、最近とくに目立つように思えます。
食べ物もエネルギーも、自然も政治も、テレビの受売りではなく、もっと自分で考えないと何も変わりません。50年も前に大宅壮一が、テレビばかり見ていると人間の想像力や思考力を低下させてしまうのではないか、という意味で「一億総白痴化」と言ったのは、やはり正しかったと思います。 2010/6/29