眠りが浅いときはよく夢を見る。楽しかった日々のこと、希望がかなう時のこと、思い出したくないことと現実が入り混ざり合ったこと。そんな夢から目覚めてがっかりすることがあれば、夢だったことでほっとすることもある。でも、それはどちらも平穏な日々の場合で、目覚めると、夢であってほしいような現実に戻らなければならない時に見る夢ほど、つらい夢はない。そんなつらい夢を見ている人たちが、今日も何十万人。寒くてプライバシーのない避難所生活は、とても熟睡などできる環境ではないから、一晩に何度も夢から目覚め、その都度涙している人がたくさんいる。
一方で、地震から10日が経つのに、原発から漏れだす放射性物質は依然止まらず、このことでも悪い夢を見る人を拡大生産してしまった。もうすでに相当な量の放射性物質がばらまかれてしまったから、今後長きにわたって、私たちはその負の遺産を引きずって生きていかなくてはならない。だから言ったじゃないか、と天を仰いでももう遅い。
原発が吐き出した放射性物質の影響は、われらが店にも津波となって押し寄せて来た。20日と21日はほうれん草だけでなく、茨城産の葉物とキノコはいったん全て販売を止めた。やがて日を追って、私たちの生産地は、今のところ基準値以下であることが明らかになってきた。そこで22日からほうれん草以外の販売を再開したが、基準値以下であれば安全といえるのか、報道を見ながら憤っていた対象の人たちと同じ過ちを犯すことになるのではないか、基準値以下なのに販売を止めるのは過剰反応ではないのか・・・。この判断は迷った。どちらにしても後悔が避けられないであろう難しい判断に、珍しく、一晩ですっかり胃がおかしくなってしまった。 2011/3/23