ひと月ほど前に、木曽の赤沢休養林に出かけた。月曜日だというのに、駐車場には何台もの観光バスが止まっていて、ツアー客は森林軌道のトロッコに乗って嬌声をあげていた。
大阪ナンバーの観光バスのツアー名を見ると、「新緑の赤沢休養林と上高地のニリンソウ」となっていた。ほう、ただ「赤沢休養林と上高地」ではなくて、新緑とニリンソウがそれぞれに添えられて、ツアーをイメージしやすくするひとつのマーケティング手法なのだな。
でも、今年の初夏は気温が低かったから、赤沢はなんとか新緑だけれど、上高地でニリンソウは咲いてないだろうな。と、もうはるか上高地などへ行ってないくせに、思ったのであった。だって、うちの庭先のニリンソウなんか、まだ蕾さえ膨らんでないもんね。
上高地は標高約1500m、我が家は標高約750m。どう考えても上高地のほうが寒いのだから、きっとツアコンは言い訳をして違う花に興味を引こうとするんだろうな。などと思いながら、新緑の赤沢の山道に向かって行ったのであった。
上高地のニリンソウと聞けば、さぞ美しい光景が目に浮かぶかもしれないが、ニリンソウは我が家の周りではどこの家にも生えている庭の花なのだ。おまけにこいつが結構図々しい。繁殖力が強くて、どんどん増えてしまう。強いことでは定評があるミントさえ押さえこんで広がってしまう。写真の真ん中に見える少し幅広の葉は、周りを取り囲まれてたじたじのブラックミント。
赤沢に出かけてから2週間ほどして、我が家のニリンソウは満開になった。白くて清楚な花が一斉に咲き揃うと、やはり綺麗だ。花も長持ちするので、あまり手の入れられない一角を、ニリンソウの園地にしてしまうのはなかなか良い。ほっとくだけで、どんどん育ってくれるし。でも、ひ弱で繊細な草花がそばにあると、消えてしまうかもしれないので注意しないとね。