毎日激しい夕立が続くのは、のこのこと午後から山に出かけるわれらにとって大変困ったことである。今日も八ヶ岳は不穏な入道雲をターバンのように頭に被っている。まあ、ダメなら白駒池の周りを歩くだけでもいいや。
麦草峠でお昼を食べながらしばらく雲の様子をうかがっていたが、どうやら今日は大したことがなさそうなので、丸山を越えて高見石に向かう。
コケとシダ、草と木の小さな箱庭。
薄暗い地面にはギンリョウソウが咲いていた。葉緑素を持たない変わり者の草。
コメツガとトウヒの密林をゆるゆると登っていく。
丸山を下って、小屋の裏から巨岩が累積した高見石に登る。
眼下に白駒池、はるか下には佐久の街。ここまで何とか雷は我慢してくれたが、高見石から下りるとすぐに茅野側から雷の声が響いてきた。
急いで白駒池に下り、木道を伝って池を回る。雷はどんどん近付いてきたが、樹林帯なのでもう怖くはないぞ。
この白駒池の周りでは、日本に存在するコケ類の半分近くを見ることができるそうだ。その名の通りモスグリーンの世界。木々の緑とはまた一味違う落ち着いたコケ色の世界。花のある草木に比べて地味なコケだけれど、もうたかがコケだなんてコケにしたりはしないと誓ったのであった。