20年前と今ではインターネットの普及で大きく変わり、10年前からはスマホの登場でさらに変わり、この先は人工知能で大きく変わるだろうと言われています。人工知能で代替できない技術の代表は、理美容など個人の嗜好に関わるサービスなのだそうです。微妙なニュアンスで表現される要望をくみ取って、形に仕上げて表現するのは相当複雑な判断が必要なのです。八百屋は生き残れるのか?
数年前は店の後継者をどう育てるか真剣に考えていたことがあります。自分がやってきた仕事を引き継いでくれる人を育てようと考えていました。ところが最近は、後継者という特定の人を育てようとすることが間違っているのだ、と思うようになってきました。それまでは、CAMBIOの仕事を今の延長線で考えていたのです。今の店主がやっている仕事が、そのまま続いていくとして考えていた。
過去の変遷を基にこれから先を考えると、特定の人の価値観で運営を続けるのは難しいと思うのです。なぜならCAMBIOという店は、店主の価値観をそのまま投影した店としてここまで続いてきました。それは店が今まで続いてきた大きなエネルギーではあるけれど、大きな失敗だったと思うのです。店には固有の人格を与え、特定の人格や個人に左右されない確固としたものでなければならなかった。
小さな店として続いてきたCAMBIOに、そんなことを求めたって無理だったとも思います。でもこれからの10年とその先に続く時代を考えると、まずは店としての人格の確立と店主の価値観との分離が必要です。ひとりの人体に収められてきた二つを分離して、CAMBIOとして育ってきた人格を店という箱に収める作業。それをできるかどうかが、店の存続を左右することになるでしょう。
その分離は同時に、後継者という特定の個人の存在が不要になるということでもあります。いろいろな人の価値観をCAMBIOに持ちこみ、多彩な人格に成長させていくことができるようになります。その過程をコーディネートし、最終的な判断と責任を持つ経営者として店主がいる。そんな至極当たり前の形に変換させることが、10年後にもCAMBIOが存続しているための条件だと思うのです。