何年か前までは、毎年夏になると一家でビンボーツアーに出かけていた。子供4人とテントを積んで、どこにたどり着くかわからないその日暮しの5日間は、実に楽しかった。一年間の期待と希望をエッセンスにして瓶に閉じ込めたような5日間だったから、帰ってきてから長々と旅行記をこの欄で書いた。最近、久々にある年の旅行記を読むと、文字の中から旅のエッセンスが漂ってきて、また遠くに出掛けたくなってきた。
もう子供たちはそれぞれの世界に出て行ったから、これからは夫婦だけで身軽な旅ができる。さて、どうせ行くのならどんな旅をしようかと、資金も時間もないくせに二人で考え始めてしまった。いいのさ、今は行けなくたって・・・。考えることから旅は始まるのだし、空想の旅だってありなのさ。 空想の世界だからどんどん話は広がって、どうせ行くのならヨーロッパを3カ月ぐらいかけて回りたい、ということになった。パリからフランスの田舎へ行き、農家民宿を泊まり歩いてスペインをに行き、ポルトガルの海辺でしばし足を止める。地中海を渡ってイタリアに行き、アルプスを越えてオーストリアからドイツに、チェコの歴史を感じる街並みにため息をついて、東欧にも足を延ばす。ルーマニアだとかアルバニアだとかは、とても居心地が良いらしいので、帰ってきたくなくなってしまうかもしれない。それでなくたって、こんな盛りだくさんでは3カ月ではとても足りない。 有名な観光地なんかはできるだけ寄らない。ビンボーツアーの面白さは、そこに住む人たちの暮らしを垣間見ることができることだから、名所よりも路地裏に魅力がある。外国で現地の人にこちらを認めてもらうには、自分は何者かというアピールができなくてはならない。欧州の田舎の人が日本のことをよく知っているということはまずあり得ないので、何か一芸を披露して珍しいヤツが来たと思ってもらわなくてはならない。 そこで思いついたのが、半紙をひらりと取り出だし、墨汁と筆でさらさらとその場で書をしたためるという芸。文字といえばアルファベットしかない人たちにとって、毛筆で漢字を書くというのはなかなかのインパクトのある芸になるはずだ。同じ芸でも歌や踊りとは違って、記念品として形に残る。 うん、これはいい案だ。旅の準備はまず書の勉強から始めることにしよう。だって、お金や休みの準備なんか、いつになったって出来そうにないもんな。
by organic-cambio
| 2009-02-03 18:15
| 店主の雑言
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