今朝、キミが朝ごはんの納豆にねぎを刻んで入れようとするのを、ボクは止めました。自分でねぎを刻んでまで食べようとする、キミの食べものへのこだわりがボクは好きなのですが、これから同級生と電車に乗って出かけるのであれば、やっぱり、それはやめておいたほうが良いだろうと思ったからです。
ボクも高校に行くようになって、毎日電車で学校に通いました。電車の中はいつもすごく混んでいて、知らない人と身体を押し合いへし合いしながら通いました。電車のドアが閉まって次の駅に着くまでは、身動きが取れないまま、見ず知らずの人の顔や頭が目の前です。だから、いろんな人の口のにおいや髪のにおいを、いやでもかかざるを得ない毎日でした。そのなかで一番困ったのは、駅の立ち食いそばでねぎをてんこ盛りに載せてたぬきうどんを食べてきたばかりのオジさんなどと、期せずしてハグ状態になること。もう、最悪だね。
中3でしかも女子のキミは、ただでも他人から自分がどう見られているか、どうしようもなく気になる年頃です。それだけに、あまり過剰に自分のにおいなどを意識することはないのだよ、と言いたいところなのですが、クルマという個のシェルターのような空間とは違って、電車の中というのはみんなで共有する場所です。パブリックスペースと言います。そんなところに出て行くときは、他人からどう見られるかという意識も大事ですが、他人に不快な感覚を与えないことを、まず身に着けて欲しいのです。
もうすぐキミも、毎日電車に乗って高校に通うようになります。電車の中では、オジサンのねぎのにおい以上に不快なことが起こることもあります。家では自分の個室、移動は親の運転するクルマ、という個の空間ばかりで暮らしてきたキミたちが、全然知らない人と一定の時間と空間を共有することになる電車の中は、結構いろいろと勉強をさせてくれる「世間の教室」になるはずです。充分に心して出て行ってください。