いつからだったのだろう、敬老の日などの祝日が決まった日ではなく月曜日になって、年に何回もお仕着せの連休ができてしまうようになったのは。平日の静かな休みを楽しんでいるわれらへそ曲がり夫婦にとって、このお仕着せ連休はあまりうれしいことではない。
今回の山歩きは連休の混雑を避けようと、行き先に一計を案じた。霧ヶ峰や八ヶ岳周辺は、どこへ行っても混んでいるだろう。乗鞍や戸隠などまで足を延ばすと、帰りは渋滞に捕まるかもしれない。そこであまり都会の人たちが訪れそうもない、地味な伊那谷の山を歩こうと思ったのだ。飯島の奥にシオジ平という渋い園地があるけれど、どうも静かすぎてクマと一緒に歩くことになりそうなのでやめた。今年もクマはどんぐりが少なくて気が立っているそうだし。
そして向かったのは宮田高原。駒ケ根の手前から急な山道を登った上にある、天空の城のような園地だ。以前子供たちを連れていったことがあるが、もう10年以上も前のことなのでよく覚えていない。ただ飛行機の窓から見るような、高度感がある伊那谷の風景が印象的だった。
山道に取り付いて12kmを登った宮田高原の園地には、ウメバチソウが群生していた。キャンプ場の中を突っ切って牧場に入る。今年は口蹄疫の影響で放牧はされなかったようで、牧場の草がひざ位まで延びたままだ。
大きなミズナラの木の下でお昼にする。この時期であれば地面にたくさん散らばっているはずのどんぐりはなく、見上げる木にも数えるほどしか付いていない。ブナの実に至ってはさらに深刻なのだそうだから、今年のクマは大変だ。
ブナの池という名の小さなため池まで1周30分ほどのかわいらしい園地だから、あっという間に終わってしまった。あいにくの曇り空で正面に見えるはずの空木岳も見えずじまい。仕方がなく図書館で借りてきた1200種掲載の野草図鑑で、周りの草花を片っ端から調べてみる。
着いた時にはまだ数家族がキャンプの片づけをしていたが、3時を回るとみんな帰路につき、そして誰もいなくなった。池に映る木の姿も静かそのもの。
たくさんのおみくじを結んだように見えるのはイタドリの種。何とか遠くまで飛ばすために、種の形もいろいろと工夫されている。このイタドリは何かに混ざってヨーロッパに渡り、今や蔓延りすぎて大変な厄介者になっているそうだ。日本でも外来種の繁殖力に手を焼いているけれど、イタドリの種が勝手にヨーロッパまで飛ぶわけがないのだから、困るのは草の繁殖力ではなく人間の所業なのである。