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我が家のテレビには「90年製」という小さなシールが張ってあって、まもなく14歳になるチビ娘よりずっと年上の御年数えで18歳になるテレビである。このテレビを買ったときのことはよく覚えている。やけくそになって当時の家計からはかなり無理をして買った、それこそいわく付きのテレビなのである。
それは3人目の子供である次男坊が生まれて間もない頃のこと。実家からもらってきた古いテレビでビデオを見ていたが、ストーリーが理解できないほど画面が暗くて途中で観るのをやめてしまった。もっとまともなテレビが欲しくなったが、とてもポンとテレビを買えるようなカネはない。 そのころ住んでいた青梅市という町は不燃物を街角のオレンジ色の鉄の箱の中に入れておくようになっていた。まだ分別収集などはしていなかったので、家電品が使えなくなるとオレンジ色の箱の周りに出せば持っていってもらえた時代のことだ。季節は12月も末を迎えようという頃だったから、オレンジボックスの周りには山のように家電品が積まれていた。 若き八百屋のオヤジは子供たちを車に乗せて、捨ててある家電品の山をあさりに行った。比較的年式が新しそうなテレビを選んで車に積んだ。暗くなったのをいいことに数ヶ所を回って「おとーさん、こんなにいっぱいどーするのお?」とまだ小さかった子供たちがあきれるまでテレビを漁っては軽バンに積み込み家に持ち帰った。 家に着き、拾ってきたテレビに片っ端から電源を入れてみた。ごみの中ではまだ新しそうに見えたテレビも、電灯の下に引っ張りこんでみるとそれ相応にくたびれていた。それでも時代はバブル真っ最中だったから、使えるテレビでも捨ててしまうやつがいるだろうと期待して、次から次へと電源を入れてみた。音は出てもまったく画像が映らない物、映っても見るに耐えないほどぼやけている物などばかりだったが、ひとつだけ良く映るものがあった。ただし、色が一色足りない。画面が白と緑だけの構成で、赤が出ない。「これで…我慢する?」と次男坊におっぱいを飲ませている妻にお伺いを立てたが、無言のまま怒りの目線で却下されてしまった。 オヤジはすごすごと拾い集めたテレビを再び車に積み込み、すっかり暗くなった町のオレンジボックスに戻しに行った。くっついてきた子供たちが「また捨てちゃうのお?」と不思議そうに訊ねてきたが、オヤジは「うんうん・・・」と上の空でテレビを放り投げると逃げるように家に帰ってきた。 その次の休みの日、もう次の休みはお正月という暮の電気屋は混雑を極めていた。八百屋一家は開き直って12回払いのローンでテレビを買い、いそいそと車に積んで家に向かった。恭しく箱から取り出して組み立てるのももどかしく、マッチ箱のような借家の片隅に黒い大きな(とは言っても25型)テレビが鎮座した。 「うわあ、音がこっちからこっちに走っていったよお」子供たちは新しいテレビに興奮した。ステレオなどというものを知らない子供たちには、大きくて明るい画面で実に画像がリアルに見えたようだった。怪獣がアップになる場面では顔を引きつらせて後ずさりをした。保育園から帰ると何度も何度も「トトロの森」を見た。「ちびまる子」が始まると、タイトルソングを歌いながら踊っていた。 そのテレビはいまだに現役で我が家の片隅に鎮座している。18年間で壊れて修理をしたこともない。これを買った時におっぱいを飲んでいた次男坊は今年で高校を卒業する。巷では薄型テレビが主流になり、電波もデジタルになるだの何だのと騒いでいるけれど、相変わらず八百屋一家はビンボーなので新しいテレビを買おうという話はない。訳あってテレビを疎んじるようになったオヤジは、このテレビが壊れたらもうテレビなんかない生活にしたいと思っているのだけれど、その頃にはもう子供たちが自分でテレビを買ってくるようになっているかもしれない。 2007/10/23
by organic-cambio
| 2010-10-16 17:51
| 店主の雑言
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