八百屋の仕事は、肉体労働である。重い野菜を右から左へと動かしてナンボの世界。今回はその仕入れの一端をお見せしちゃおう。
われらが出荷センターは、東京郊外の青梅市にある。そこから毎週3回、路線便のトラックで荷を送ってもらっているのだが、コストを少しでも下げるために、今年から月に1回、高速代が1000円になる週末に、青梅まで走って車に積めるだけ積んでくることにした。
ハイエースの後部座席をたたむと、これだけ広くなる。ここに、まずセンターに返す発泡スチロールの箱を積む。
発泡は店の2階に置いてあるのだが、1か月でこれだけたまる。
いかに隙間を作らずに詰め込むか、これが結構難しい。
前もぎっしり。走ると発泡がこすれあって出す音が、青空でさえずるヒバリのようでにぎやかだ。
青梅までは高速で160km、2時間弱。数年前に八王子の手前から圏央道がつながって楽になった。この青梅は、われら一家が岡谷に来る前に住んでいた、懐かしの地でもある。出荷センターはかつての勤め先。
出荷センターで荷を積み始める。まずはすぐに下さなくてもよいもの、人参、玉ねぎ、みかんなどを天井まで積んでいく。
おじさんは必死である。真冬でも額から汗が落ちる。
うまく効率よく、そして箱がつぶれないように、重いものを下に積まなくてはならない。おじさんの空気頭はフル回転だ。
次から次へと荷が攻めてくる。今度は乾物や調味料を詰めたコンテナだ。これはきちんと積めば効率が良い。
積み始めて約30分で、大方を積み終えた。荷を仕切った担当者は、とてもハイエースに積める量ではないと思っていたらしいが、意地汚いおじさんはそんな予想を裏切ってきれいに積んでしまった。でも、真ん中の人の後ろにある冷凍品を詰めた発泡3箱だけは積めなかった。くやしい・・・。
車にぎっしりてんこ盛り。重さにして約1トン強。金額にして約50万円分であるぞ。
車は大きく沈み込み、タイヤも苦しそうだ。でも積載量は1250kgだから積載オーバーではない。
運転席に迫る野菜。ぎっしり目いっぱいに荷が偏らずに積んだから、車のバランスは取れている。でも、今回は重い。高速道路では平坦でも80km/hがやっとだ。上り坂になると60km/hまで落ちてしまう。登坂車線で大型トラックに抜かれ、下り坂ではよろよろする。行きは2時間弱の距離を、帰りは2時間半かけてゆっくり走る。
そして、店に着くとすでに閉店時間後。凍みては困る野菜を下し、ほとんどの荷を積んだまま家に帰る。
次の朝、スタッフが来る前に車から下ろし、野菜はバックヤードに収め、乾物や調味料は棚の前に置いてスタッフに並べてもらう。すべて下ろし終え、収め終わると、もうお昼。厳しい肉体労働が終って、半日だけの休みをもらい、次の朝からまた新たな1週間が始まるのである。