濁河温泉に行く途中でひらめいた御岳登山は、カミさんの尻押部隊に4人の子どもたちが参加して15日に決行された。最近はなんだかんだと毎年1回はどこかの大きなピークに立っていて、子どもたちも誰かしらが一緒に登っているのだけれど、6人全員がそろって山に登るというのは遥かぶりのことになる。もう25歳から17歳だから子どもたちと言うトシではないのだけれど、小さかったころの山で疲れて泣いたときになだめたり励ましてくれた母親を、今度はてっぺんまで押し上げる役目を担って集まった。
予定より1時間遅れて8時に田の原から登り始める。早くもガスが上がり始めた。
田の原からしばらくは緩い上り坂が続く。娘たちはジーンズやジャージというスタイルで体つきも細いけれど、短パンにスパッツを穿いた今ふうの男よりも登るのは断然早い。
金剛童子で1本目の休憩。カミさんは体調がイマイチだというが、ここまではコースタイムを上回るいいペース。
ハイマツ帯を登るころになるとガスはどんどん濃くなって、怪しい空になってきた。カミさんの調子も怪しい。ガスの間から王滝頂上の小屋が見え、まずあそこまで頑張れとカミさんを励ます。
足元にはミミナグサ。
王滝頂上が近付くとハイマツが消え、硫黄の匂いが漂ってくる。
岩陰にはイワギキョウ。
王滝頂上を通り越し、剣ヶ峰へ。左手には地獄谷の噴気孔があって、ジェットエンジンのような音と硫黄臭が漂ってくる。
尻押し部隊が出動。
剣ヶ峰直下には急な階段が待ち構えていて、二人がかりでカミさんを押し上げる。
11時15分。剣ヶ峰頂上に到着。視界ゼロ。周りが何も見えないと、そこは3000mを越える頂上というより、ただの神社の一角という趣。
11:30、遠からず雨が降りそうなので、長居せずにそそくさと下山開始。一瞬ガスが切れて赤茶けたルートが望めた。
父親はバランスウォークでどんどん下っていくが、筋力がすっかり落ちているのでやがて体の抑えが効かなくなって、しまいには足がヨレヨレになってしまった。このお調子者の浅薄は翌日以降に激しい筋肉痛と化して肉体を苛み、衰えを実感させられることになった。
金剛童子辺りから雨が降り始め、田の原に着くまでしっかりと降られてしまった。ピーカンの夏山を期待していただけに、まったく展望がないことにはがっかりしたが、不調のカミさんも無事ピークに立てたので良しとする。来年は社会人になっているはずの息子たちのことを考えると、全員で山に登るのもこれが最後かもしれない。そう思うとヨレヨレの足を引きずっていても、田の原に着いてしまうのが少し名残惜しかった。