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先週の月曜日は、ハイエースに発泡スチロールの箱をしこたま積んで店を出た。塩嶺峠を越えて安曇野に向かい、三郷の豆腐屋Mさん宅まで片道約1時間。積んできた発泡スチロールは豆腐を送ってもらうための通い箱で、年に2回、こうして返しに行く。以前は週に2回、ここまで豆腐を取りに走っていて、夜に店を閉めてからここまでの往復は大変な労力だった。着いた時にまだ豆腐が出来上がっていないことも多く、パック詰めを手伝いながら時計が10時を回り、家に帰りつくと日付が変わってしまうこともあった。
店を始めた時からだから、このMさんとも20年の付き合いになる。「もう20年だねえ」と感慨にふけりながら、お互いに良く言えば変わりがなく、悪く言えば進歩がないことを認め合ってて頭を掻いた。その頃はどうしても地元の豆を使った豆腐を店に置きたくて走ってきたのだったが、やがて夜駆けは身体が辛くなり、10年前からは宅配便で送ってもらうことになった。それでもこの豆腐を店に置くのをやめなかったのは、お客さんの支持が強かったからだ。 あらためてここまでの道のりを車で走ってみると、当時のやりたいことには労を惜しまなかった若さが懐かしく、無駄な労力を省くという名目で楽をするようになった今の自分に、枯れた賢さよりも衰えた醜さを覚えてしまう。それでいいのかという問いよりも、それしかもうできないという選択の貧しさに、20年という時間の重さを自覚せざるを得なかった。 Mさん宅を出て、車をさらに北に向かって走らせた。安曇野を通り抜けて大町市へ。旧市街の街道から少し入ったところにある「麻倉」で開かれている古い漆器展に。麻倉は、美麻村など近隣でとれる麻を保管するために江戸時代に建てられたものだったが、戦後は使われなくなって廃墟と化していたものを、移住してきた手仕事作家たちが手直しをして、ギャラリー兼イベント会場として再利用している。 麻倉の持ち主はやはり江戸時代から続く造り酒屋で、その麻倉の収蔵品を整理していくと木箱に納められた輪島塗の漆器や、皇族が泊るためにあつらえた桐箱に納められた布団など、「お宝」と呼ぶべき貴重な品々がたくさん発見された。そこでこれをイベントとして一般に公開することにしたのだが、あまりにその数が豊富なため、今回はまず漆器の一部を公開し、4月に第2弾を公開する予定だという。麻倉のことや展示品を手仕事作家の人たちが丁寧に説明してくれるのだが、この人たち自身がこの展示会を楽しんでいることがよく伝わってきて、良い時間を過ごすことができた。 漆器は一つ一つが和紙に包まれて誂えた木箱に収められ、この麻倉の一角でひっそりと眠り続けてきたので、保存状態がすこぶる良いそうだ。それを聞いて、以前訪れた須坂の田中本家を思い出した。江戸時代から続く豪商の倉で収蔵する雛人形は、人形の部分ごとに分解して真綿に包んで保存される。だから、毎年春の雛人形の展示には箱から出して組み立てて展示するだけで1週間がかかるという。百年以上前のものが今も良い状態を保っているのは、造りが良いことだけでなく、その保存や収納にも場所や手間が費やされているのだ。 麻倉の持ち主である作り酒屋や、須坂の田中本家のような素封家は、その時代の庶民とはケタ違いの金持ちだった。それがただの金持ちで終わらないのは、時代の文化に金を注ぎ、それを後世に残すパトロンでもあったことだ。今も羽振りのいい会社がメセナなどと言って自分の名前を冠した上物を建てたり、オペラやコンサートを開催ことがあるが、どうも似つかわしくない。それによる広告効果やイメージ戦略を考えているのが透けて見えて、衣の下から派手な下着が覗けているような気がするのだ。2012/3/6
by organic-cambio
| 2012-03-06 17:31
| 店主の雑言
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