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3月になってから、日中に車で走るとやたら教習車が目につくようになった。高校の卒業式が終わって、みんな一斉に免許を取ろうという時期なのだ。自動車教習所という事業も大変だ。いまは一年を通して需要があるわけでなく、この3月に教習生が集中するのだから◆免許を取って、車を買ってもらって、自分の意志で街中を走り回れるようになると、18歳の人たちも一人前になった気分になるのだろう。親も子育てを終えた気分になれるのだろう。でも、免許を取るのに三十万円、車を買えば安い中古車だってン十万円だから、子育ての最終段階はカネがかかるのだ。それを我が家でやろうとしたら、×4=ン百万円となるので、とてもできないから早々に予防線を引いておいた。免許は自前だよ、と。その結果、4人とも成人する段階になって免許を持っているのは2人、自前の車を持っているのは1人だけだ。しめしめ、予防線は効を奏したかと思っていたら、どうやら別の事情もあるようだ◆我が家の4人は、85年から93年に生まれたいわゆる「ゆとり世代」。何事にもがつがつしないし、周りの人間関係も適当な距離を保ち、無駄な消費よりも実質的な品選びをするという特徴をあげられる世代。世代の特徴なのか、親から遺伝した性格なのかははっきりしないけれど、4人のうちの男二人は、かつて同世代の特徴でもある「草食系」と言われた特徴を見事に備えていた。その「草食系」の模範のようだった次男は必要に迫られて免許を取ったが、東京に暮らす長男はいまだに免許を取る予定すらない。その分海外に出かけたり、何かを蒐集したりするのかと言えばそうでもなく、それなりの生活費を稼げばあとは自分のペースで生きているのが良い、という欲のない暮らしぶり。そんな長男のような暮らしぶりの人を、最近では「さとり世代」というらしい◆ゆとりにしろさとりにしろ、世代を語ろうとするとその世代が育った時代の世相に原因を求めることになりがちだ。彼ら「さとり世代」の場合は教育課程であったり、生まれてからずっと不況の中であったりしたことをあげられるけれど、親の一人として、彼らの気質を形成した原因の一つにはゲームの存在を欠かすことができないと思う。子供のころから小さいゲーム機で遊び、大きくなった時にはかなり現実に近い感覚で入り込むパソコンのゲームで遊んできた影響が、絶対にあると思う◆ゲームが彼らに及ぼした影響について話を突きつめていくにはあまりにゲームについて知らなすぎるが、若いころに彼らが遊んでいるようなゲームのなかった自分たち世代との比較で考える限り、彼らは暇を持て余すことがなくなったことが大きいと思う。彼らは暇どころか少しでも時間が空けば積極的に、悪く言えばゲームにはまり込んで遊んできた。暇だなどと感じる間もなく、いつだってゲームという相手が遊んでくれた◆ゲームの中にはさまざまな場面が設定されていて、クリアして次に進んでいくことで達成感が得られる。さらにポイントや新たな武器を得ることもできて、感覚的な達成感だけでなく現実的な数字やグレードとしても進化することができる。ネットを経由して他人と組むこともできて、はるか遠くの見ず知らずだった人と仲間になって戦うこともできる。創作した名前やキャラクターで活躍すれば、普段の生活では得られない異能の人間としてゲームの世界で生きることもできる◆そんな世界が家に帰れば部屋の中の画面に創出できたことの影響は大きい。車に乗らない、酒を飲まない、旅行をしない、恋愛に淡泊、ブランド物に手を出さない、などと彼らは欲のない世代だと言われるが、世相が彼らに与えた影響だけでなく、簡単に欲望を満たすことのできるゲームというものが身近に存在したことも、彼らの気質に大きな影響を与えている。それが世代としての現象なのか、わが息子たちだけの個別の現象なのか、検証する手立ては持ち合わせていないけれど、親のひとりとして実感している。
by organic-cambio
| 2013-03-26 16:44
| 店主の雑言
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