おかげさまで、今年も4日間の夏休みをフルに使って遊んできました。休みを家でゆっくり過ごすということができない貧乏性なので、1日目の朝から最終日の夜まで北陸3県を走り回ってました。比較的近いとはいえ、言葉も習慣も違う知らない土地を歩き回るのは、やっぱり楽しくてやめられない。
伊那から木曾を通って高山に入り、白川郷を抜けてまずは富山の木彫り細工の街、井波へ。大きなお寺の柱や欄間など、あちこちに精巧な一刀彫りが施されている。そういえば我が家の息子も一年だけこんな木工を学んだヤツがいたなぁ。なぜかその後、突然目覚めて東京の大学に行ってしまったけど。
井波から少し走ると高岡。道路を市電が走る大きな街。大仏が鎮座する古い街。明治期の大きな商家や街並みが健在で、今やそれだけで充分な観光価値がある。空襲がなければ各地にこんな古い街が残っていたのだろう。東京駅と同じ辰野金吾が設計した銀行の本店もあって、今も現役で使われていた。
井波の観光案内所で「高岡に行くなら御車山会館を見るといいですよ」と勧められたので、入ってみる。お祭で引き回す絢爛豪華な山車とその祭の一部始終が展示してある。地域の人が大切に守ってきた長い歴史の文化財は、他所から訪れた人間がその土地を理解するための手っ取り早い教科書になる。
2日目は金沢。西茶屋の九谷焼の窯元へ。輪島の漆器もこの九谷焼もどことなく金満な雰囲気があって手が出せない。輪島の蒔絵と同じように九谷焼も絵付けに価値が認められるからだろう。素朴な味とは程遠い派手な色使いが貧乏性には気恥ずかしいのだ。地味な茶碗を老母の卒寿の祝いに求める。
振り返れば、毎年夏の旅では焼き物の窯元を訪ねていて、昨年は小鹿田の里を歩いて飛び鉋の器を手にした。その前には伊万里や有田の窯元も歩いたが、どこも窯元には端物しか残っていない。器を買うなら都会のギャラリーの方が良いものがあるが、その器が生まれる土地や歴史の方が面白いのだ。
金沢の九谷だけでは中途半端になるので、能美市にある九谷焼資料館でもう少し深くお勉強をして満足し、その後は海を見に東尋坊まで走る。そのタイムスリップしたような超日本的大観光地ぶりに、懐かしい夏休みの雰囲気を感じた。イカ焼きの匂い、お土産屋の数々、羽目を外したお父さんの姿。
3日目は朝から雨だった。福井から眼鏡の街、鯖江へ。もう50年も眼鏡をかけて暮らしているのだから、眼鏡はすっかりとカラダの一部になっている。だから、かけ心地が良くて見栄えも良い眼鏡が欲しいのだけれど、そこはド近眼の悲しさで作れる眼鏡に制限があって、ずっと不満を抱いてきた。
鯖江なら良い眼鏡があるかもしれないと期待して眼鏡が一堂に集まる眼鏡博物館で探すと、ひとつセルロイドのフレームが気に入った。屈折率が高い遠近両用レンズとセットでいくら? なんと今回の旅の予算2回分ではないか。あははは、出直してきます。これも良いお勉強になったのでありました。