普段の生活では全くTVを見ないのですが、旅先のホテルでは必ずTVを見ます。とくに朝はNHKをつけて地方局のニュースや天気予報を見ると「いつもとは違う土地にいるんだなぁ」という気分になれる。県内を区分ける呼び方に「へぇ~知らなかった
よ」と見入ったり、ローカルな地域のニュースは全国同じような切り口だから「もうちょっと面白い映し方はないのかよ」と突っ込んでみたり。
旅先では寝る前にも夜の番組を見ることがあります。我が家のTVは御年28歳で、いまだにデジアナ変換だから映るチャンネルが限られているし、見る方のおツムも9時半消灯なので眠ってしまう。ホテルのTVなら衛星やらCSやらいっぱいチャンネルがあるから、浦島太郎の気分が味わえる。小豆島に渡る前夜に泊まった姫路のホテルでも、BSで面白い番組があって見入ってしまったのでした。
歌舞伎役者の代替わりを負ったドキュメンタリーを見終えて、リモコンをあれこれいじっているとカズオ・イシグロのトークイベントに当たって、これが面白くて眠れなくなってしまった。読むのはノンフィクションばっかりだし、訳本は大の苦手だから彼の作品は手に取ったことさえないけれど、長い作品でもプロットを立てずに書いていくというような話の内容に、すっかり引き込まれてしまった。
やっぱり作家ってすごいんだなぁ。テーマがあって、舞台があって、場面設定があって、それを表現する文章力がなくてはならない。でもTVを見ていてすごいなぁと思ったのは、参加者からの質問に答える実に真摯な話し方でした。話の内容も面白いけれど、ぐいぐいと引っ張るような力のある話し方に引き込まれたのです。人柄もあるけれど、育った文化の違いなのだろうかと考えてしまいました。
翌朝はすっかり寝不足。頭が眠ってくれなくて夢ばかりを見ていた感じ。なぜTVが嫌いかと言えば、単に面白くないからです。見ている間は受動的にしかなれないのに、流れてくる番組がつまらなければ見なくなるという単純な理由なのです。こんな面白い番組があるんだったらTVを見る生活も悪くはないと思ったのでした。でもその前に28歳のTVに引導を渡して、新たに買い替えなくてはね。