台風で3日間も雨が降り続いた日に、久しぶりに精油を焚きました。ドアを全部閉めて密閉空間になったので、何かしら香りをアレンジしようと。使ったのはラベンダーとゼラニウム。どちらも嫌いな人が少ない香りで、ゼラニウムはローズの香りに似て幸福感を感じてもらえるかな、と。寒い季節はこうしてときどき精油の香りで店の空間を彩ります。特異なものは避け、オーソドックスな香りで。
数ある精油の中でも、どうしても感覚的に受け入れがたい香りがありました。クラリセージやベチバーなど。女性は好きなのだそうですがワタクシは全く受け入れられず、自分に必要がない香りなのだと理解してボトルは隅っこに置いてあります。香りには好き嫌いだけではないナニカもありそうなので、深く考えない。ただ、生理的に許せない香りも最近は増えてきました。香りというより匂いです。
精油は植物から取り出した天然成分ですが、世の中に出回っている香りの成分はほとんどが化学合成物質。いろいろな花の香りを化学的に合成して作り出しているのですが、それはやっぱり香りではなくて匂いにすぎません。その人工的な匂いが必要なところと言えば、昔から決まっていたのはトイレ。臭くてたまらないから代わりに匂いでカバーする。気の毒なのはその代表的な香りとされた植物たち。
秋の最中の今、あちこちのお庭で金木犀が香っています。あの香りは消臭剤としてよく使われてきた経緯があるので、ワタクシは金木犀の香りをかぐと昔のトイレを思い出します。良い香りなのにね。最近はもっと由来を特定できない、フクザツな匂いをカラダから発している人が増えました。洗剤や柔軟剤に含まれる匂い成分が衣類から発する匂い。それは香りではなく消臭剤と同じただの匂いです。
昨年、八百屋の食卓で香害のレクチャーを開催しました。洗剤や柔軟剤が発する匂い成分で、カラダに不具合が発生する人が増えていることを、知っていただきたかったからです。それから一年が経ちますが、まだ何も変わる気配がありません。柔軟剤の匂いに満ちた人はさらに増えているようにさえ感じます。それはワタクシの中で人工的な匂いに拒絶感が強くなってきたことがあるかもしれません。
コロナウイルスに脅える日々で、化学的な物質を使う機会が増えたことが背景にあるかもしれません。それはさておき、人工的な匂いがこれ以上当たり前になると、空気を介した花粉症に匹敵するアレルギーが増えることになるでしょう。感覚的な問題にとどまらず、メンタル不調や不定愁訴が増えることになるのではないかと危惧しています。安っぽい人工的な匂い、なんとかならないものでしょうか。