かつて商店街が賑やかだったころ、同じ駅の北口と南口に別の商店街があると、十年の単位で隆盛が入れ替わると言われていました。やがて駅前にスーパーができると根こそぎお客を奪われて、シャッター街になっていくのですが、それは個店が中心だった時代から大型店に流通の主役が交代する光景でした。そしてネット通販が台頭すると、目に見えない交代劇があり個店はさらに減っていきました。
すでに車社会化していたとはいえ、まだ駅周辺が賑やかな時代にあえて商店街から少し離れた場所に最初の店を構えた私たちには、商店街の栄枯盛衰に巻き込まれたくないという気持ちがありました。しかし、その後十年もたたずにやってきたネット通販の波に巻き込まれて、稼ぎ頭だった商品群をごっそりと失い大ピンチに立たされました。個店はいつも波に洗われる海の藻屑のような存在なのです。
それでも潰れずに今も続いているのはいくつか理由が挙げられますが、一番大きいのは時代に迎合しなかったことだと思っています。ネット通販が当たり前になってもやらなかったのは、自分のスタイルを崩してまで売上を上げようとは思わなかったから。結果としてそれで苦しむ時期が長かったけれど、確固としたコンセプトを守り続けることができた。そして今になってまた風向きが変わってきた。
地元の野菜を扱う小さな店ができ始め、雑誌が個店の特集を組むようになってきました。ネットで何でも買えるけれど、個店の空間や主張や現物が並ぶ棚は、ボタンをポチる買い物とは違うことが再認識されてきたのだと思います。店を次の世代に引き継ぐ方法を模索してきましたが、少し考えが変ってきました。誰でもできるようにするより、このまま突っ走って終わるのがいいのではないか、と。
