車中泊やキャンプツアーを卒業して10年近く経つ。車中泊は子どもが大きくなって車に入りきらなくなったのでやめ、キャンプ場でテン泊しながらあちこちに出かけた。ちょうど10年前の夏は長崎まで足を延ばし、西の果て生月島で気持ちが良いけれど誰もいなくて何かがあったらヤバいキャンプ場で一夜を過ごした。車中泊はコスパが良いけれど、テン泊は何よりも開放的なのが好きな理由だ。
これからは夫婦だけならまた車中泊もいいけれど、もう卒業することにしたのは場が荒れてしまったから。車中泊やテン泊で使ってきたのは主に公設の無料キャンプ場だったが、その当時ですらかなり荒れていた。ゴミが山になって夜中は騒ぎまくる連中がいて、ゆっくり過ごせる場所ではなくなっていた。無料でみんなが使える場所だと何でもやり放題になってしまって、場はどんどん荒れるばかり。
車中泊というスタイルは気ままで自由な旅ができて良いと思うのだけど、コスパが目的になって一気に荒れてしまった。いかに安く済ませるかはみんなのものをいかに勝手に使うかと同義になってしまって、道の駅や公園はどこも車中泊を締め出さざるを得なくなってきた。みんなで使うことを積み上げておけば次につながるのに、みんなのものを奪うことで車中泊はしづらくなってきてしまったのだ。
この国はとても豊かな自然に恵まれていて、野山は雑に扱ってもすぐに回復する底力を持っている。それだけに人間は野山から奪うことばかりが身に付いてしまって、ケアすることを怠ってきた。それでも野山は今日もあり続けているから、危機感を感じる人は少ない。同じように車中泊もみんなのものを奪うことを続けていると、思ったようにできなくなってしまう。そして不自由な世界になるのだ。