我が家の近くで春先から造成工事をしていた畑が、宅地として売り出されました。坪当たり5万円から。ひと区画67坪で338万円から96坪578万円。クルマ一台分の価格でそこそこ広い宅地が買えちゃうんだから、安くなったもんですね。私たちが家を構えた30年前の半値以下ですよ◆一方で、東京都心部の新築マンションは、直近の平均価格で1億3千万ぐらいだそうです。富裕層ではなくて一般的なお勤めだと、マンションだけに一生が縛られてしまうような世界。夫婦共働きでローンを組むと安直に離婚もできなくなるので、夫婦のかすがいになるというブラックなジョークもあるらしい◆土地やマンションの価格で比べれば田舎と東京には経済的な格差があるように思えるけれど、それぞれの価値観で選択しているだけのことです。昭和のオジサンたちは一軒家を構えるのが夢だったので、郊外に街が拡大していったのですが、首都圏の周辺には限界住宅地と呼ばれる廃墟が増えつつあるそうです。これもまた当時の価値観で選択していった結果。令和を生きる人たちの30年後はどうなっているんでしょうか◆先週の旅で見た風景でけっこう印象的だったのは、日本海沿岸の村の寂れ方でした。昭和から平成という人口ボーナス期に増えた建物が、令和の時代になって朽ち果てる過程が始まっていたのです。人口が多かった世代の後塵を拝して生きてきた私たちにとって、なかなか刺激的な光景でした。人間が老いて死ぬと姿を消してしまうけれど、建物はそのまま廃墟になり朽ち果てる過程を道端にさらすのです◆そして東京のマンションはといえば、将来的に維持と建て替えなど価値を保ち続けることが問題になるといわれています。それ以前に壊滅的な被害を受ける災害の恐れもある。地面に足がついていないと生きていけない私といたしましては、早いこと東京から逃げ出しておいてよかったと思うのです。もっともマンションなんて買う経済力もなかったのですけれど。